応用情報技術者試験はIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が実施する国家試験です。IT人材に必要な応用的知識とスキルを問われる、高難度の試験として知られています。
この記事では応用情報技術者試験の難易度について解説します。
1.応用情報技術者試験の難易度は高い
まず客観的なデータをもとに、応用情報技術者試験の難易度について解説します。
1-1.合格率が低い
応用情報技術者試験の過去10年間の合格率は以下の通りです。例年20%前後で、5人に1人程度しか合格できません。
他の受験者と競争して上位20%に入る必要があるので、難易度が高いと言えます。
(※出典: 令和6年度IPA統計資料)
次にIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が実施する他の試験の合格率を見てみましょう。
・基本情報技術者試験
IPAが実施する試験で基本情報技術者試験がありますが、こちらは以下の通り40%程度という高い合格率になっています。
・ITパスポート試験
同じくIPAが実施するITパスポート試験では、以下の通り50%を超える合格率になっています。
上記のとおり、他の試験と比較しても応用情報技術者試験の合格率は低く、難易度が高いと言えます。
1-2. 必要な勉強時間が多い
応用情報技術者試験は出題範囲が広く、合格点を取るためには多くの勉強時間が必要なため、長期間勉強を継続することが難しい人にとっては難易度が高くなります。
合格に必要な勉強時間について解説します。
・午前試験の勉強時間
午前試験に必要な勉強時間の目安は以下の通りです。
・午後試験の勉強時間
午後試験に必要な勉強時間の目安は以下の通りです。
上記より、応用情報技術者試験の合計に必要な勉強時間の目安は、午前・午後合わせて110時間程度となります。
週5時間勉強時間を確保したとして、毎月20時間勉強して6か月程度勉強時間を継続する必要があります。
2.問題の難易度
応用情報技術者試験はしっかり問題を読み、問われている内容を理解して、論理的に考えて解答を導く必要があります。
以下は問題の難しさという観点から、応用情報技術者試験の難易度を解説します。
2-1.ネットワークの問題
問題の難しさを示す例として、令和6年度春期試験 午後問題 問5のネットワークの問題を見てみましょう。
■令和6年度春期試験 午後問題 問5(一部を抜粋)
・全国に設置するIoT機器から気象データを収集して、クラウドサービスで分析した結果データを提供する新システムの構成案は以下のとおり。
・収集された気象データは情報提供用サーバに保存される。
・S社クラウドの各サーバにSSHでログインして更新プログラム適用などの保守作業を行う。
・各サーバからインターネットへのアクセスに対しては、任意のwebサイトへのHTTPSだけを許可する。
・FWの許可ルールの設計案は以下のとおり
■解答
a 200.a.b.13
b 200.c.d.101
c TCP/443
aは「収集された気象データは情報提供用サーバに保存される」という記述から、情報提供用サーバのIPアドレスである200.a.b.13 が正解です。
bは「S社クラウドの各サーバにSSHでログインして更新プログラム適用などの保守作業を行う」という記述から、保守用PCのIPアドレスである200.c.d.101が正解です。
cは「各サーバからインターネットへのアクセスに対しては、任意のwebサイトへのHTTPSだけを許可する」という記述から、TCP/443が正解です。
このようにネットワークの問題であれば各種プロトコル知識や通信経路の理解力が必要で、問題の難易度が高いです。
2-2.システム設計の問題
例としてもうひとつ、令和6年度春期試験 午後問題 問7のシステム設計の問題を見てみましょう。
■令和6年度春期試験 午後問題 問7(一部を抜粋)
・業務用ホットコーヒーマシンの制御用ソフトウェアのタスク処理概要は以下のとおり。
■解答
カップ判定中にドアを開けられたことを検出したいから。
問題文中からドアタスクよりから判定タスクの優先度を低くする必要があることを読み取り、その理由を解答します。
このようにシステム設計の問題ではシステム構成やタスク内容を理解して、論理的に解答を導く必要があり、問題の難易度が高いです。
3.合格の可能性を最大限に引き出す秘訣
上記のとおり難易度が高いですが、実は応用情報技術者試験には合格の可能性を上げる秘訣があります。
以下は応用情報技術者試験の合格の可能性を最大限に引き出す秘訣について解説します。
3-1.選択問題の分野を決める
応用情報技術者試験の午後問題では、11個の分野から5個を選択して解答します。
出題分野が上記のとおり固定なので、必須の情報セキュリティ以外は、選択する分野を決めて集中的に勉強すれば、それだけで合格の可能性が上がります。
例えば、現場でネットワークの実務経験がある人はネットワーク、コーディングや単体テストをやっている人はプログラミングを選択すれば良いでしょう。
3-2.高得点を取りやすい分野を選択する
実際に過去問を解いてみると、高得点を取りやすい分野とそうでない分野があることが分かります。
筆者の体験やSNSの投稿などから、高得点を取りやすいおすすめの分野を紹介します。
おすすめ度:★★★★★
データベース
データベースの問題はパターンが決まっており、E-R図とSQLがほぼ毎回出題されます。特に下記の設問が多く、過去問で類似問題を勉強しておけば高得点が期待できます。
・E-R図のエンティティ名、関連矢印の向き、主キー/外部キーの判別
・SQLの穴埋め(特に「GROUP BY」と「HAVING」)
おすすめ度:★★★★
経営戦略
技術的な知識が不要でマーケティングの知識を問う問題が多く、文系で国語が得意な人なら高得点が期待できます。
おすすめ度:★★★
プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント
プロジェクト管理や運用管理がテーマの問題で、全体をイメージしやすい問題が出題されます。マネジメントの経験がある人はセットで選択することをおすすめします。
4.まとめ
応用情報技術者試験は難易度が高く、合格するためには相当な勉強が必要ですが、合格すればIT人材に必要な応用的知識とスキルを身に付けていることを証明できます。
今回解説した難易度を踏まえて、応用情報技術者試験の勉強を計画的に進めていきましょう。